




まるで時が止まったようでありながら、不思議と時の流れも感じられる町並み。
重要伝統的建造物群保存地区、富山県高岡市吉久(よっさ)。
さまのこ(格子戸)の奥に、季節の風がすっと抜けていくような静けさと、どこか懐かしい温もり。
この地でカフェ「よっさ柴屋」を営む、温かく穏やかなオーナーご夫婦の姿は、その町の空気そのもののよう。
私と歳が近いせいだろうか。
珈琲の香りも、流れる音楽も、交わす言葉も、心の深いところにそっと沁み込んでくる。
機械がどんなに進化しても、人の心を本当に癒すのは、やはり“人”なのだと思う。
何気ない笑顔や、丁寧に淹れられた一杯の珈琲。
それらに触れたとき、人は自分の輪郭を取り戻すのかもしれない。
「AI時代に、人間がすることは恋愛しかない」とふと思った。
それは誰かに恋をすることに限らず、
町に、人に、風景に、言葉に…何かを深く慈しむように生きること。
そんな想いを、吉久の町と「よっさ柴屋」で静かに受け取った午後でした。